ヨーロッパ製機関車の伝導機構

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upload 2006/8/27

 その2 蒸気機関車

 ヨーロッパ製の模型機関車の伝導機構は面白いものがある。
走りを重要視しているので、ロッドに頼らずにギヤで動力を伝え、ロッドは飾り的な役割をしているものや、テンダーロコでは機関車は単に押されているだけで実際の動力は石炭車に積まれている等である。

 どれもこれもこうなっているわけではないが、実に考えているなと思う。そこでいくつか紹介したい。
                 なお、この一部は「鉄道模型趣味誌714号」に掲載しました。


☆Trix トリックス Bayer TenderDampflok DX1
  (C+従輪)

 美しく塗られた小型蒸気機関車。


キャブが外れ、モーターとフライホイールが見える。

従輪にまで伝導している

小型モーターにフライホイールをつけウオームから沢山のスパーギヤで全車輪に伝導している。
すなわち従輪にまで伝導している。

また,動輪もすべてギヤ連動でロッドは飾りである。従輪にまで伝導しているのは車両の形態上,車体の重量がかなり従輪にかかるためと思われるが、動輪と径の異なる従輪に伝導しているのはギヤ比がさぞ難しかったことだろう。

 ロッドを用いないのは強度,耐久性,スムーズさからと思われる。ロッドに頼らない方式は結構多い。

 集電は車輪内側をシューでこする構造で従輪を含め4軸すべてで集電している。
 従輪も台枠に取り付けられている形状のために事実上D型機関車となる(従輪は首を振らない)。そこでカーブ通過対策として第2第3動輪の左右動は大きく作られている。

 ギヤ比が高いために非常に低速でスムーズに走るが、ギヤの数が多いためにギヤ音が大きいのが欠点である。

 

☆ ROCO ロコ DRG 98.7 BBマレー式蒸気機関車

 マレーはシリンダーが2組有り,台車スタイルになっているので、電気機関車のように台車が振るものと思って裏をみたら、一つの台枠に車輪が4軸並んでいる。実質的にD型蒸気機関車で、その割り切り方に驚いた。

 4軸固定のくせに、中の2軸の横の遊びを大きくしてあるので半径290Rをスムーズに走る。モーターは5極でフライホイール付きの両軸タイプで水平に配置し,両側のウオームから両側の2軸ずつに伝導している。

 すなわち全軸伝導。集電シューは車輪のフランジに当て8輪集電。

走りは静かでフライホイールの効果が大きく実に快調(すこし利きすぎ)。

また、同じくROCOの小さな機関車グラスカステンもフライホイール入りでスローでもスムーズにポイントを通過する。


グラスカステン、大きなフライホイールがある。

 


☆ Liliput リリプト 2C1 テンダーロコ


スポーク動輪から台枠が透けて見える。

 C61並の大きさで29,500円だった。完成品ですよ!
 しかも半径356Rを通過する。

 テンダードライブで主台枠に動力装置がないために走行中は動輪のスポークを通して台枠や、ボイラーの下が透けて見えて実に美しい。

 蒸気機関車の足周りはこれほど軽やかなものかと感心する。

 テンダーには大きなフライホイール付きのモーターが積まれ、自動車のタイミングベルトのような、ギヤに似た凸凹のあるコックドベルトとプーリーでウォームの軸に伝導している。

そして、前後の2軸を駆動している。その内1軸にゴムタイヤを付けてある。

 

テンダー台車はダミーで首を振らない。4軸固定になっていて、中の2軸の左右動が大きく曲線通過に対応している。こんな構造は日本型の蒸気機関車を作っている人には信じられないだろうけど、ここまで割り切っているのだ。

 集電は機関車とテンダーの両方から行っている。

 ヨーロッパのテンダー機関車はほとんどテンダードライブである。だから走行装置がシンプルであるし、ロッド調整を気にすることもない。また台枠周りもすっきりするし、おまけに機関車を手で押せばロッドの動きを楽しめる。

どうせ実物の様にシリンダーから動力を得る訳でもないのに、ロコにモーターを入れる必要があるのだろうか。

 天賞堂のC55もバックマンの製造であるから、テンダードライブだったら良かったのにと思う。そうすればスローでの走りがもっとスムーズになっただろうに。



☆ Fleischmannフライッシュマン T3

 実はフライッシュマンの機関車は電気機関車であれ蒸気機関車であれ、ほとんどフライホイールを使っていない。

 フライホイールのお陰でスムーズな走りが出来ると叫んでいる私としては都合が悪いのだけれど、フライホイール無しでスムーズに走る。これは走りのフライッシュマンだからこそできる芸当だと思っている。

ギヤはプラ製で案外荒い。
中央の動輪にギヤで落としてロッド連動であるが、ウオーム一段落とした後2つギヤを介して動輪に伝えている。

 ギヤ比は33:1と大きく落としているが、ギヤの音がほとんどしない。

また、ロッド伝導であるが全くロッドを感じさせないスムーズさである。ロッドの作りが良いのだろう。そしてモーターはキャラメル型の3極モータである。

ただアマチュアの長さは15mmと長い。

しかし何故3極モーターでこんなにスムーズなのか。
他のフライッシュマンの車両も3極が多い。これを動かすと、スペックで性能を語れないと思ってしまう。

 なおフライッシュマンのテンダーロコもテンダードライブで、前記のリリプトのような構造であるが、ベルトではなくギヤである。これもフライホイールは無いがスムーズである。

フライッシュマン BR99 

 

 以上、手持ち車両の一部を紹介したが、分解して構造を調べるのは面白い。
しかし、あまりお勧めできない。

分解、組み立ての途中でよく壊すことがある。

 良く走ると書いたフライッシュマンT3の集電シューをものすごく曲げてしまった。
 多分、元の走りは取り戻せないでしょう。

                                    完

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