安原一式
upload 2020/8
安原伸義さんのへの、お悔やみの念を祈って
昔々安原一式というフィルムカメラがありました。 |
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フィルムカメラが終焉を告げる頃、今から30年近く昔の話です。 その頃私のメインカメラはフィルム式のコンタックスアリアでした。 まあ、普通の一眼レフです。 そして、時代はディジタルカメラが出始めてきていました。 そんなときに私は、カメラマン田中長徳さんの本を読んで、レンジファインダーカメラに興味を持ったのでした。 田中さんはライカ使いで、レンジファインダーカメラが大好きとのこと。 その頃に、聞いたことも無い「安原一式」というカメラがあることを知りました。 安原伸義さんが、一人で立ち上げたカメラ会社で一人で作っているとのこと。 この方は、大きなカメラ会社で働いていたけれど、そこを辞めて一人で会社を立ち上げた。 元の会社が、私が使っていたコンタックスを作っていた京セラなのです。 京セラはともかく、一人でカメラを作れるものかと驚いたのですが、もちろん工作そのものは、カメラを作れる中国の会社に頼んでいるのですが、設計や色々な部品の手配も一人でやっていた。 安原一式です。 これはかなりマニアックなカメラで、不備な部分もかなりありそう。 しかも、生産台数が少なくなかなか手に入りそうに無い。 やはり欲しがるマニアの方はかなり居るのです。 同じ頃、カメラメーカーのコシナがレンジファインダーのカメラ発売しました。 BESSAシリーズです。 やはり大手の会社だけあって、しっかり作られている。 私もそれを購入 これに古いレンズを付けたりして撮影していました。 さらに もっと古い時代の形をしたBESSA Tも買ったりして。 実は、コシナの進出で、安原一式は売れなくなったそうです。 もともと買いたくてもなかなか手に入らない程度の生産台数でしたが、なにせ一人で会社の経営から設計からコマ使いから何から何までやっている会社なので広告も出せないし、販売経路も無い。 これで、そこで、安原さんはもっと手軽な小型カメラを開発しました。 小さいけれど、かなりマニアックに作られている。 こういうものをホームページで宣伝販売しているのですが、なにせ、中国の会社との連絡その他が上手く行かないようで、なかなか製品が出来てこない。 メディアも珍しい会社なので安原さんにインタビューを申し込んでも、一応答えてはくれるのだけれど、一人で経営している会社で、インタビューに答えていると、その間は何も仕事が出来ない。 何も作れないし設計も出来ない、ということで、極力そういうインタビューを断るようにしていたようで、ホームページによく書かれていました。 私としては安原一式が買えなかったのでこれを買いたいと思ったのでしたが、バックオーダーが2年とか、それも改良など、不備を直しもっての製作なのでいっこうに製品が出てこない。 そして、その頃ディジタルカメラが出始めたので、小型のフィルムカメラを買う人は居ない。 一握りのマニアだけなのだが、製品が日の目を見ないか、数台だけで、終わってしまった。 そこで、安原さんは会社存続のために、カメラ用の小物、マニアックなオールドレンズや、超広角レンズなどを作って販売された。 その中に、NANOHAという名前の接写リングがあった。 2つ組で、色々な倍率で接写が出来る。 これは購入しました。 HOのキテルです。 これをNANOHAで撮ると これぐらいは拡大できる。 カメラはディジタルのマイクロフォーサーズ、確かパナソニックのG1だったろうか。 というようなことで、安原さんのホームページを注目していました。 時々、メーカーとユーザーの立場について愚痴的なことも書かれていて、それがなるほどと納得できるので、感心していたのです。 ユーザーは勝手すぎます。 その勝手でメーカーに損害を与えている。大きな会社ならそれぐらいカバーできるのでしょうが、一人の会社ではユーザーに返事する時間だけでも、損失になるので、その辺りの事も解って欲しいと。 自分の好みでカメラを作っているが、マニアックなユーザーに喜ばれるように努力していました。 と書いてきましたが、私は全く面識があるわけでは無くホームページを見ていただけです。 先日 久しぶりに安原カメラのホームページを開くと 安原伸儀、去る令和2年3月22日、享年56歳にて逝去致しました。 店主の急逝により、3月22日以降の全ての業務が停止しております。 店主ひとりで経営しておりましたため、事業の継続は困難であり、再開の予定は御座いません。 お客様には大変申し訳ございませんが、ご理解を賜りますよう何卒よろしくお願い致します。 長らくのご愛顧、誠にありがとうございました。 故人に代わり御礼申し上げます。 と出ていました。 びっくりです。 お歳も56才とは若い。 ご冥福をお祈りします。 |