ヨーロッパ製機関車の伝導機構 1
電気機関車など
upload 2006/3/27
ヨーロッパ製機関車の伝導機構
20年ほど前に入門キットに入っていたメルクリン製Cタンク機関車を始めて分解したときに唖然とした。
すなわち台枠とモーターの一部が一体の鋳物、それもダイキャストではなく本当に鉄の塊であった。そしてモーターの軸は車輪と平行に置かれスパーギヤで伝導されていた。
また,軸受けはU字型ではなく単なる穴で車輪は打ち込んであった。従って車輪は台枠からはずれない。
今までモーターは独立したパーツとして台枠に取り付けられ,台枠は真鍮製で車輪は下に抜けるのが当たり前と思っていたので,あまりの違いに腰を抜かしそうになったものだ。
これはおもちゃだなと思ったが,模型自体おもちゃであると考えると実に合理的に設計されていることがうかがわれた。
すなわち安くできて壊れない,メンテナンスも簡単で部品点数も少ない、数十年も同じ設計で使える等々。
その後ミニトリックスのNゲージの機関車の走りの良さに驚くなど,次第にヨーロッパ製品を買う事が多くなってきた。
もちろんHO車両の価格がブラスの国産より安いこともあるがやはり走りの良さと急カーブを曲がれることが大きな理由である。
そして次第にこれらのメカニズムに興味を持ってきた。そこで手持ちの動力車をかたっぱしから分解してみた。
そして分かったことは集電の徹底化と伝導機構の合理化、それにフライホイールの使用である。ここでは代表的な電気機関車や電車の伝導方式をいくつか紹介したい。
◎ 電気機関車・電車
まずは、かなり変わっていると思う方式から
☆ フライッシュマン
DB Class111型 BB電気機関車
モーター軸は車軸と平行に置かれ、そこからスパーギヤを5つ介して片側の台車の2軸に伝導している。台車の真ん中にモーターとギヤボックスが位置するためにボルスターを付けることができない。台車枠と車体が直接繋がる構造となっている。この構造が面白い。
車輪は動力,非動力台車とも鋳物製の台車に打ち込まれていてはずせない。
フライホイールはないがスパー連動のため慣性があり、走りは低速から高速まで実にスムーズで、すばらしいとしか言いようがない。運転が楽しくなる1台。
このような旧式の伝導機構でこのような走りが見られるのは驚異である。
なおスイスのHAGも同様な伝導機構で金属ギヤを使っていて、一段と素晴らしい走りと実物のRe4/4のような音で魅惑する。車体はダイキャストでフライッシュマンの2倍近い価格である。またいずれも片側台車伝導なので、牽引力アップのためにゴムタイヤを使っている。
HAG社の電気機関車。ネジ1本で分解できる。モーターは上記のように横置き。床板は鉄板である。
☆ リリプト LILIPUT
電車にも大きなモータを使っている例
SBBスイス型電車ReDe4/4
車体にモーターを置き、片側台車に伝導する方法である。
大きなモーターとフライホイールの効果でスムーズな走行を見せている。
また、ジョイントが台車の中心近くにあるので、急カーブでもジョイントのズレが無くスムーズに走行する。ジョイントを台車の中心近くに持って行くのは幾何学的に最も無理のない方法である。
この方式だとモーターが車内に見えるが、この電車の場合は機械室になっているのでまったく見えない。
リマのベルリンSバーンの伝導。
同様な方式で両軸モーターで全軸駆動しているが、窓にカーテンを付けて車内を見えなくしている。
スムーズに走るためにはトルクの強いモーターにフライホイールを付けるのが有効で、モーターを見えなくするように小さなモーターを用いるとスムーズな走行は望めない。
☆ ロコ、ブラハなどの電気機関車、ディーゼル機関車。
ロコの凸型ロッド式電気機関車。
かなり古い製品なのでジョイントはバネである。またフライホイールは付いていない。そのためか多少スムーズさにかける。
ブラハの電気機関車 最近の製品
水平に置いた両軸モーターにフライホイールを付け、ウオームで台車に落とす。基本的に上図と同じ方法、すなわちNゲージとほとんど同じで、やはり良い走行である。
現在ではカトーやトミックスのHOゲージの機関車も同様な方法である。