イギリスの保存鉄道
2004年イギリスの保存鉄道を訪ねました。
upload 2006/5/5
ここ数年はドイツ、スイス、オーストリアなど大陸の鉄道ばかり訪ねたが、今回はロンドン近郊の保存鉄道を2つ探索した.
ブルーベル鉄道とケントサセックス鉄道である。
ここでは保存鉄道だけを書こうと思ったが、そこに行く前後も鉄道で移動したので、それらも含めます。
ヒースロー空港に着くと「ヒースローエクスプレス、ロンドンの中心まで最短時間」と書いたポスターが目についた。それに惹かれて地下に降りると切符売り場があり日本円で2700円ほどする。
地下鉄なら700円ほどなのですごく高い。でも試しに乗らねばなるまい。空港の地下に駅があり格好の良い電車がホームに入ってきた.
乗ると荷物置きはもちろんあるし、シートも大きく、なによりも清潔感がある.イギリスにこんなに最新型の車両があったのかと感心する。
地下から地上に出て走ること十数分、横手にやはり新型車両が並んでいるヤードを通り越すと、すぐにパデイントン駅に到着。
大きな駅で回転寿司の店もある。そのままホテルに向かえばよいものを、大きなカバンを引っ張って陸橋に上がり、沢山並んでいる列車を撮る。初日から、あー疲れる。
ブルーベル鉄道に向かう
この鉄道は保存鉄道で、主に土日に運行していて平日は少ない。ブリティッシュ鉄道の線路とは繋がっていなくて、途中でバスに乗って行かなければならない。
ロンドン・ビクトリア駅から南に向かうイースト・グリンステッド行き電車に乗る。列車は真中に外開きのドアがある旧式の国電(?)で情緒があるというか、ぼろいと言うべきか。でも珍しいのでうきうきしていると1時間半ほどで終点イースト・グリンステッド駅に着く。
「イースト・グリンステッド駅」
ここからブルーベル鉄道のあるキングスコートまでバスがある。古い2階建てのデッカーバスだと本に書いてあったが最新型の低床式のバスが来た。
満員の客を乗せてアップダウンのある田舎道を右に左に飛ばして、町を越え森に入ったと思ったらブルーベル鉄道のあるキングスコート駅だった。
ブルーベル鉄道
この鉄道には3つしか駅がない。
やがてすぐに列車が到着した.
グリーンの流線型テンダーロコでいわばC55のようにボディーは箱形であまり蒸気機関車らしくない.しかし美しく磨き上げられていて実に綺麗な機関車である.
それが数両の古いが、やはり綺麗に磨き上げられた客車を牽いていた.客はかなり乗っている.ここは終点なはずなのに誰も降りない.おかしいな?乗るべきかどうか迷っている内に蒸気機関車を外している。
やっぱり終点で列車の方向を変えることが分かった。それでは乗り込もう。少し離れた売店でコーヒーを買い、車内に入る。テーブル付きの座席だ。
蒸気機関車の音はあまり大きくない、しかしカタンカタンというレールの音はまさしく昔の国鉄と同じだ。トンネルに入ると一層国鉄らしく夜行列車みたいな雰囲気になり思わず郷愁を感じる。
やがて中間駅のホルステッドキネス駅を過ぎ、終点のシェフィールドパークに到着。レストランや土産物などの売店もある。ほとんどの人はここまで自家用車で来て、列車に乗り、キングスコート駅に行って戻ってくるようだ。それでキングスコートでは誰も降りなかったのだ。だからこの駅でほとんど降りる。そして機関車の連結解放や給水などを間近で見ている。
皆さん休日に保存鉄道に観光に来ているのです。
やがて緑の蒸気機関車は機回り線を通ってまた反対側の先頭に立ち出発準備ができる。機関士はキャブから身を出して観光客や鉄道ファン達と色々話ししている。もちろん英語で。仲間に入れない。
この駅でゆっくりしようと思ったが、ホルステッドキネス駅の模型フェアを見るために、この列車に乗って戻ることにする。客車には新たな顔ぶれの乗客がほぼ満席近くいる。やがて発車。こんどは機関車に近い車輌だったので、ドラフトの音が良く聞こえる。するとどうも聞いたことのない響きだ。ひょっとしてこれは3気筒なのだろうか?
ホルステッドキネス駅でのフェアは中古の模型を売っている出店が数十店程出ている。
「駅で開いていた中古模型フェア」
ほとんどホーンビー製で、もともと玩具っぽい上に古くていっそうボロく見える。でも変わった物、例えばOゲージの、いやもっと大きいかも知れないがブリキでゼンマイ仕掛けの蒸気機関車もある。
ひょっとしたら掘り出し物があるのかもしれない。
古い郵便車の中は古本屋だった。20m級ほどある客車の中に作られた棚という棚に鉄道関係の書籍が並んでいる。
そしてどの店もすごい人だかり。
イギリスは鉄道発祥の地。模型ファンも多いのだろう。そしてボロイと思って見ていた模型車輌も見ている内に、この程度の製品でも遊ぶのには充分ではないだろうかと思えるようになってきた。
安く遊べるじゃん。そして土産に買おうかと思った。でも買わなかった。
実は昼食はシチューの入ったパイを買ったが、長ーい時間並んで時間がかかって大変だった。これで時間が無くなったので模型を選ぶ暇が無くなったことと、ロンドンの模型店に行く予定もあったからだ。
今度は黒いタンクロコが入ってきた。タブレット交換をしている。それを何人もが写真を撮っているがビデオの人の方が多い。動くし音も入るしビデオを持ってくれば良かったかな。でも手間なんだよな。
この駅員かっこいいでしょう。保存鉄道なので雰囲気を出すために、駅員の格好もそうだし、駅舎には古いカバンや荷物など色々な演出もある。帰国後これらの写真を友人達に見せると、これが普通のイギリスの鉄道だと思われてしまう。これは明治村みたいなものですよ、と言ってやっと納得してもらえる。
まあこんな感じでブルーベル鉄道を後にしたのでした。
ケント&イーストサセックス鉄道
これは、ロンドンの南東ドーバーの方向にある小さな鉄道で、日曜日にプルマンカーでサンデーランチがあるというので行くことにした。申し込みは日本から電話で日にちと人数(といっても一人だが)を言えば済んだ。
日本を発つまで一ヶ月以上あるので切符を送ると係のおねーちゃん?が言ったので、待っていたら出発間際になっても切符が来ない。
メールで確認したら訳の分からない英語のメールでやりとりしている内に日本を出発してしまった。多分予約出来ているはずなので、駅で聞くことにする。
ある本によると、ロンドンからドーバーに向かう列車で約1時間ヘッドコーンで下車、そこからバスでケント鉄道の始発駅テンターデンまで25分とのことだった。
これなら簡単だと安心していたのだが、よく調べると日曜日は列車が少ない。それどころかバスは日曜は無い、無いのです。なんという国だ!
一説によるとサッチャーさんが鉄道嫌いで道路に力を入れたためとか。
サンデーランチは予約したのに行けないではないか。
おまけにサンデーランチは日曜しかやっていないし。レンタカーを借りようか、日本と同じ左側通行だし。でも道路標識は英語だぞ。やはり鉄道のルートを探そう。
苦戦の末、ヘッドコーンよりドーバーに近いインターナショナル・アッシュフォード駅からテンターデン行きのバスがあるのを見つけた(インターネットは便利だね)。
一日2本ほどだがうまく乗り継げば行ける。インターナショナル・アッシュフォード駅はモデルバーンのツアーでユーロスターに乗った時に通ったので何となく安心感がある。ということでこのルートにした。
日曜日朝7時40分、ケンジントンオリンパス駅で地下鉄を待っていた。しばらく待っていたが来ない! もしや地下鉄でも日曜日は本数が少ないのでは?必死になって時刻表を探すと始発は8時半だ。
目的の列車はチャリングクロス駅8時24分だ。
あわてて広い道に出てタクシーを捕まえてチャリングクロスに向かう。
これに遅れれば今日中にケントに行くのは不可能だ。
ということで、なんとかぎりぎりにロンドン、チャリングクロス駅に着く。
でも大きな駅なのでそこで迷っていては乗り遅れる。だが、用心深い私はブルーベル鉄道の帰りにチャリングクロスの下見をして駅の場所と切符売り場の位置を調べておいたのだ。
で、スムーズに切符も買え何とか間に合った。
ホームに行くと前から5両がアッシュフォード行きとある。頭端式の駅なので一番後ろから歩いて前に行く。車両番号が書いていないので先頭を見つけて前から5両目を数えてそれより前に乗らなくてはならない。発車時間は迫るが沢山繋いでいる上にホームがカーブしていて先頭が見えない。
10輌編成ぐらいあっただろうか、小走りに走って飛び乗ったらすぐにベルもなく発車した。
この電車が面白い。一両に8つドアが付いたタイプで、席ごとにドアがある。そしてドアを開けるのはドアの窓を開けて(下ろして)窓から手を出して外にあるドアノブを回さないと開かない。
これを知っていないと降りられない。開けたドアはバタンと勢い良く閉めないとロックがかからなくて危ない。
だから駅に止まるごとにあちこちでバタンバタンと音がしている。これがロンドンの真ん中から出発する列車だ。でも古いけど快調に100Km/hぐらいは飛ばしている。
2時間ほどでアッシュフォードに着く。
ここからバスでテンターデンという田舎町に向かう。
バスは一日2本しかないけれど客は私を入れて4人。
狭い田舎道をぶっとばす。2人の客は私と同じくケントサセックス鉄道に行くようだ。その人たちがバスの運転手と大声でしゃべっているが何を言っているのか分からない。
ドイツより英語圏の方がましとイギリスに来たが、あー俺の英語力は。これならドイツの方がましだ。
1時間ほどでテンターデンの町に到着。駅に向かう。
小さな田舎駅だが色々な車輌が置いてある。
ここからサンデーランチの集合駅のノーシアムまで列車で行くのだが、予定していた列車がない。適当に乗ったら車掌がこの列車は行かないので次を待てとか教えてくれて、なんとかノーシアム駅に到着。
「お世話になった車掌さん」
「途中の機関庫で」
ノーシアムではプルマンカーがタンクロコに牽かれて出発準備が出来ていて、すでに乗客も乗っていた。
私が最後らしかった。
チケットが届いていなかったので心配していたが、名前を言っただけで直ぐに席まで案内してくれた。たぶん車掌さんが連絡してくれていたかも知れない。
「プルマンカー」
車輌に乗り込んですぐにしまったと思った。
客は皆ネクタイをし女性は着飾って、いわゆる正装である。
多分ネクタイがいるはずと旅行には持ってきていたがロンドンの暑さで、ネクタイをする気がなく部屋に置いてきた。
それで頚もとを手で隠すようにして席に着いたけれど、隠しても遅い。
以前、モデルバーンのツアーでやはりロンドンからオリエント急行のランチトリップに乗ったことがある。この時はネクタイ着用と言われていたので多分今回も、とは思ったが、田舎鉄道なので、と、みくびったのがいけなかった。
イギリス人はわざわざ正装をする場所を作るのだ。音楽会しかりオペラしかり。そしてランチトリップも。そうして人生を、生活を楽しむのである。
列車が出発する頃、飲み物が運ばれてきて、前菜、メインディッシュと進んで行く。
「前菜がフルーツ」 「ボーイがフルコースを運んでくる」
窓からは、野原が広がりたまに羊や牛がいる。小川には白鳥の姿も見えた。
ゆっくりと走り、蒸気機関車の煙がたなびいているのが見える。
そして終点に着くと機関車を反対側に付け替えまた、反対の終点(ケンターデン)に向かいそこでまた反転して、ノーシアム駅に戻る。
そのころにはデザートやコーヒーも終わり、皿の上に請求書が置かれる。こういう場所でも普通のレストランと同じでチップがいることは知っている。そこでカードで支払ったがチップも含めて精算した。
ボーイのサンキュウの言葉で気持ち良くサンデーランチが終了した。
これで、この鉄道は終わりで、近くにあるライという町にタクシーで行って泊まるつもりである。
ところが、この小さな駅にはタクシーがなかった。
そこで駅員はテンターデンに戻れ、今なら直ぐ列車がある。切符は要らないと言って反対側のホームに案内してくれた。
実は反対側のホームに行く踏切は柵が下りていて、自分では渡れない。そこで駅員が信号所の職員に柵を開けるように許可を取って案内してくれたのである。
そして入ってきたジーゼルカーの車掌にただで乗せるように言ってくれて無事テンターデンに到着。このジーゼルも趣があってなかなか楽しめた。
テンターデンはちょっとした町なのでタクシーが拾えるかと思ったら見つからないので、駅に戻り、駅長にタクシーを呼んで貰って無事宿にたどり着くことが出来た。なお田舎のタクシーはロンドンと違い普通の乗用車です。
ライの町
ドーバーの近くの小さな町、ライ。
ここは昔島だったらしいが、小さな丘の上にあって石畳の坂道が有名である。
海賊が巣くっていたというマーメイドインという古いレストランがあり、蔦が絡まって歴史を感じさせている。
その向かいのやはり古めかしいが小綺麗なホテルに泊まった。
この町の写真を撮るのも旅行の目的の一つだったし、なんとなくライカで落ち着いて撮りたかったので、鉄道写真は撮りにくいのだけれどライカを担いでいった。
ライは期待通りの瀟洒な田舎町だった。
ライの石畳
翌日、ライの駅で列車を待っていたら、反対行きの列車が入ってきた。古いジーゼルだ。
先頭車の前半分が機関車のようでスイスの電車機関車?を思い出す。
乗る列車も古いのかと思ったらこちらは最新型のジーゼルで自動ドア、エアコン付きでシートも大きく電光掲示板もあって快適そのものだった。
途中、ヘイスティングスという町に寄って古城にあがった。目の前は英仏海峡。目を凝らせばフランスが見えると思ったが見えそうで見えなかった。
昔ノルマンディーがイギリスに攻めてきてイギリスが占領されたヘイスティングスのバトルで有名だそうだが、この丘の上で寝ころび、さわやかな風に当りながらそんなことに思いをはせていたのは幸せそのものだった。
なお、タクシーで城に行こうと「キャッスル」と言ったが通じない。何回か言う内に「おー、カッスル」と言いかえされた。イギリスではキャッスルではなくカッスルと発音するようだ。
イギリス鉄道
イギリス鉄道と呼ぶのが本当かどうか知らないが、以前にあったイギリス国鉄は分割・民営化されて28もの運行鉄道会社に分かれたそうだ。そこでここではこれらをまとめてイギリス鉄道とよぶことにする。
電化区間は架線が無い3線式だとは聞いていた。
しかし以前から何回かイギリス鉄道には乗っているのだが、架線がないものの第3軌条がどんなものか詳しく見ていなかった。
改めて見ると通常の線路の横30cmほどのところに、線路と同じレールがあり、これが第3軌条となる。
そのレールは走行用の線路より数センチ程度高く施設されているだけで、何気なしに見るとレール交換用に横に置いてあるだけに見える。そしてこれは線路の右にあったり、左にあったりする。
「第3軌条と台車の集電子」
そして、たとえば右側の第3軌条が無くなり、左側に第3軌条が現れたりするが。そのときレールの先端は少し低く、徐々に正規の高さなり、台車の集電子がぶつからないようになっている。
では、踏切ではどうなっているのかと疑問が湧く。右にも左にも第3軌条は無いので電車が止まってしまうのではと心配する。でもその程度の距離は惰性で走れるし、集電車も一両だけではないので問題はないそうだ。
それでは、ポイントはどうなっているのか? というと、これが複雑で当然走行用の線路は普通のポイントであるが、その右や左にぶつ切れ状態の第3軌条があり、一見したところどうなっているのか良くわからない。
「ポイントと第3軌条」
ということで、線路のすぐ横にカバーもなく第3軌条があることが分かったが、これでよく感電事故が起きないものだと心配になる。
地下鉄
やはりロンドンに来たので地下鉄の話を少し。何回か乗ったことがあったが、夏の地下鉄は暑いの何の、おまけに狭いし混んでいる。乗換も地下道が長くあまり快適ではなかった。
「狭い地下鉄(チューブ)の車内」
おまけに読んだ新聞はそのまま置いて行く。読み回しのためかと思ったらジュースの空き箱もイスの上に置いて行くので単にマナーが悪いだけか?。
「こちらは広い車内」 「ハイストリート・ケンジントン駅」
でも線によって広い車輌が走っているし、空が見える駅が多いので町中以外は気持ちがよい。
ホーンビー
ホーンビーとはイギリスの鉄道模型のメーカーでどちらかというと玩具に近い。
でもせっかく来たのだから売っている模型店を探した。ボンドストリート駅の近くのアンティークショップの地下に目指す模型店はあったが朝早いのか開いていない。
近くのスターバックスコーヒー(日本と同じ)で時間を潰してから行ったがやはり閉まっているのであきらめて歩いているとリバティー百貨店のそばに5階建てぐらいの玩具屋があり、その何階かに鉄道模型の売場があった。
そこはほとんどがホーンビーだったが他にフライッシュマンやリリプトも少し置いてあった。
ショーウインドーを覗いているとライブのマラードがあった。HO(1/87)より少し大きいOOゲージ(1/76)だが本当に蒸気で走るのである。大きな箱に機関車と運転装置、水?燃料?などがセットになって10万円と少しぐらいだった。
蒸気で走るというのは魅力である。でもよい値だ。それに水や燃料も専用がいるのではないかと思いあきらめた。
それで、ケント&サセックス鉄道のパンフレットにあったようなタンクロコに古典客車、カラフルなレタリングの貨車を買った。保存鉄道ではこのような列車をイベントの時に走らせているようです。
かわいい編成でしょう
完
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