鉄道模型の運転方式

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upload 2013/4/1

鉄道模型の運転方式

鉄道模型は電気で動きます。

動力車に積まれたモーターに電圧を掛ければモーターが回転して機関車が動く。 基本的には0Vから12V程度に電圧を上げることで静止からだんだん速くなります。

これはとても簡単な事のようですが、交流、直流、そして最近ではディジタル制御、すなわちDCCが現れて、少し複雑になってきました。
そこで、一度、運転方式を整理して見たいと思います。

電気系を話すにあたって、まずは集電方式(線路)の話から。


1. 集電方式

1) 2線式

 

HOやN等、最も一般的に行われている方式で、左右2本のレールに給電し、車輪を通じてモーターに電気を送る。
一般に直流電源に直流モーターを用いて、左右の電位を逆にすることで反対方向に走る



2) 3線式


真ん中にも集電用の線路がある。 左右の線路は同電位となる。
メルクリンで用いられているが、この図では、交流モーターを用いていないし、リレーも用いていないので、現在のメルクリン方式に近いが、あくまでも線路の説明に用いた図である。
また、Oゲージのライオネルや昔のOゲージでも3線式が用いられている。

この方式の欠点。
 2線式の車両を走らせられない。
 真ん中にレールがあり実物と異なり見苦しい。しかしメルクリンでは中央レールを点状にして目立たなくしている。


 レイアウトでバラスを撒いたりウエザリングするとほとんど目立たない。


この方式の利点。
 両側の線路が同電位なので、両側の車輪からも集電できる。 これは集電不良に対して思った以上に効果が高く、ヨーロッパの展示用の大型レイアウトはメルクリンが広く用いられていることからもその能力が解る。

 リバースや複雑な線路でも、ギャップや特別な配線が不必要な事で、シンプルな配線が可能である。

 片側レールをセンサーに使ったり、真ん中に付いた集電シューをセンサーに使ったりすることが簡単で、信号や自動運転などの制御に有利である。



3) トリックス方式の3線式


左右の車輪は絶縁してある。 中央レールと片側の車輪を使う事で、同じ線路上で2台の列車を独立に運転できる。 ドイツの駅などに置いてあるレイアウトがほとんどこの方式である。


4) その他
 架線を用いて給電する方法がある。
上の方法と組み合わせると、同じ線路上で数台走らせることが出来る。


以上集電方式を述べたが、集電方式と今から述べる運転方式とは別の物と考えて欲しい。



2. 運転方式


ここで話す運転方式とは、車輛の速度を変えて列車を実物の様に走らせる電気方式の事です。最近ディジタルでコントロールする方法が現れて来たので、ここでは A)アナログ、B)ディジタルと大きく分けて説明する。


A. アナログ方式
1) 交流方式(交流モーター)

 交流とはプラスとマイナスが交互に変わる電気方式で、家庭用電源では関西では1秒間に60回(60サイクル)、関東では50回変わる。
 家庭用電源を変圧器を用いて運転するが、変圧器のタップ切り替えで電圧が0から15Vぐらい変わり、機関車の速度を変える。

 交流ではモーターも交流用が必要です。
 Oゲージは交流モーターを用いていました。この問題はモーターの逆転のために、車輛に電気の極性を変える逆転機を搭載しなければならないことでした。 ですから、反対方向に走らせるには、車輛の所まで行って、逆転機を動かして反対方向に走らせる必要があります。

 メルクリンでは交流モーターを用いていますが、特殊なコイルを用いたモーターと、車載用の逆転用特殊リレーを用いて、さらに変圧器も一瞬だけ25Vが出せる特別な変圧器を用いることで、車載の逆転機を遠隔操作できるようにしていました。これで、車輛のそばまで行かなくても運転席から車輛を逆向きに走らせられます。
しかし、メルクリンは19**??かに、この方式を止めて全面ディジタル化(後述)しました。 従って現在はこの方式は用いていません。 ただし線路は3線式ですので、客車などはそのまま使えますし、昔の機関車も改造キットでディジタル化して現在の方式で走らせることが出来ます。


2) レオスタットによる直流方式(直流モーター)

交流はむしろ特異で普通は直流を用います。変圧器を用いて電圧を落とした後に、整流器で直流にします。 その後に列車の速度を変えるために、レオスタットという抵抗器を入れ、そのつまみを回して速度制御する方式です。
最近ではほとんど用いられません。

3) SCRによる直流方式(直流モーター)
 直流にしたあと、SCRという半導体を用いて電圧を制御することで、半波整流の効果が出てモーターの回転を非常に遅くすることが出来る、すなわり超スローで機関車を走らせることが出来る方式です。 これもモーターの振動が大きかったりモーターに良くないとかで、使われなくなりました。


4) トランジスターによる直流方式(直流モーター)
 変圧器を用いて電圧を落とし整流した後の、電圧制御にトランジスターを用いる方式です。現在多く用いられていると思われます。

カトーのNゲージ用コントローラー。多分トランジスターを用いている。


5) トランジスタースロットル(直流モーター)

 実物の電車の様に、マスコンを入れると段々加速し、ブレーキを掛けると徐々に減速して止まる方式です。 基本的にはトランジスターを用いています。

自作したトランジスタースロットル。


実物の様な運転が出来ますが高価です。
欠点として、車輛が接触不良で止まっても、加速するために電圧が上がって行き、接触不調が解消され、モーターに電圧が掛ると猛ダッシュで飛び出すことがあります。これはトランジスタースロットルの欠点では無く、車輛の接触不良の問題ですが、良くあることなのでこの点の注意が必要です。



7) PWM方式による制御(直流モーター)
 PWM (pulse width modulation) パルス幅制御と呼ばれる方法です。 今までの方式がすべて線路に掛ける電圧を変えていましたが、これは全く違う方式です。

車輛が停止している時にも室内灯やヘッドライトを点灯させておきたい事や、車輛を低速でスムーズに走らせる目的で使われます。

電圧を変えるのでは無くて、電圧はある程度かけて、線路に加える電気を切ったり入れたり、いわゆるパルス状に電気を加えます。 パスルの幅が狭いと電気を掛ける時間が短いのでモーターの回転が遅くなります。 パルスの幅を広くするとモーターの回転は速くなります。
ヘッドライトなどは、パルスの幅が短くても点灯します。




トミックスのコントローラー


カトーのコントローラー

電車が停止中も室内灯が付いていて、スローで走りだし実感的な運転が出来ます。
しかし、カトーのコントローラーでは機関車によって、遅くはなるものの停止しないものがあり、モーターとの相性がありそうです。 

また、周波数の高いパルスのために、DCCのようなディジタルシステムではデコーダーを壊す恐れがあります。

そこで、メーカーによっては、PWMと普通の直流出力との切り替えが出来るようになったコントローラーも発売しています。





B. ディジタル方式


 上に示した直流アナログでの制御をDC(直流)方式と呼び、ディジタルでの制御をDCC(ディジタル コマンド コントロール)方式、メルクリンをモトローラ方式と称することが多い。

 同じ線路の上で複数の列車を走らせたい、停止状態でも室内灯やヘッドライトを点灯させたい、さらに、汽笛や蒸気機関車のドラフト音を出してみたい、という要求にこたえるべく、ディジタル技術が鉄道模型の世界にも進出してきました。

 大きく分けてメルクリン方式とDCC方式があります。 似たようなものですが、同じではないので、お互いにそれぞれのコントローラーでなければ運転できません。 しかし、最近のコントローラーによってはどちらにも対応していて、混在して使う事も可能になっています。


DCと違う事は、コントローラーがディジタルコントローラーです。
そして、車体にデコーダーと呼ぶ、電子部品を積んています。
これを介して、モーターに電圧を掛けて走行させます。


上の図は2線で書きましたが、線路が3本のメルクリンも電気的には同じなので、この図と同じと思って下さい。

 基本的には、線路に高周波の交流を掛けっ放しにして、その上に機関車に対する制御信号を乗せます。

 機関車は自分のアドレスという認識番号を持っていて、デコーダーが自分に対する信号が来たときのみ信号を受け取り、それをモーターに送って走ったり止まったりします。このために同じ線路の上に複数台の機関車を乗せても、同時に全部が走りだす事はないのです。
なお、モーターはPWMで制御します。 モーターとの相性もありますが、そこはディジタルなのでいろいろ調整することが出来ます。

また、サウンドデコーダーを積んで、スピーカーを積めば、蒸気機関車などのサウンドが出せます。サウンドデーターはデコーダー内にメモリーされています。 書き換え可能なタイプでは、自分で音源を作り入れることもできます。


ディジタルでは車輛だけでは無くて、ポイントや信号などの制御もでき、その配線は画期的に簡単になります。



1) メルクリン方式
 メルクリンは1984年からディジタル化を始め、1987年頃には私のメルクリンのレイアウト「ウエルテン王国鉄道」でもメルクリンディジタルを採用しています。
 現在はその頃よりずっと進化していて、モトローラー社のチップを積んでいるのでDCCに対し、モトローラーと呼ばれる事もある。

 最新のコントローラーはセントラルステーション2である(2016年よりCS3が発売された)。

これはメルクリン方式のみならず、DCCにも対応しているのでメルクリン以外のDCC仕様の車両等も制御できる。
また、無線LANにも対応し、iPadなどの携帯端末からも機関車の制御が出来る。
車載デコーダーでmfxと呼ばれる仕様は、機関車を線路に乗せるだけで、アドレス他CV値などが自動でCS2に送られ、めんどうな機関車の登録をしなくても良い。 さらに2013年にはmfx+も現れ、機関車の運転台の写真が端末上に現れ、そこのレバーなどを操作することで、機関車の運転が出来る。

一方、メルクリンは自動運転などの制御も簡単に出来るようになっている。

なお、安価版としてfx仕様などもあり、また、コントローラーも入門セットについている安価なものから数段階販売されている。


2) DCC 方式
 メルクリン以外のディジタル方式と思ってよい。 しかし、基本的な規格は同じであるもののヨーロッパとアメリカでかなり違いがある。
 簡単にはヨーロッパのDCCの電圧は18V程度、アメリカのそれは12Vと程度と大きく違う。
また、CV値やファンクションの設定等メーカーに寄り大きく異なる部分もある。
主なメーカーとしてはヨーロッパがESU、ROCO、レンツ等、アメリカがディジトラックス、MRC、MTHなどがある。

アメリカタイプ

カトーのコントローラーで、ディジトラックスのOEM。
入門用の位置づけで価格も安い。

各メーカー色々販売しているが、私はアメリカ型について詳しくないので割愛。


ヨーロッパ製

ESUのECOS

ESUは初めにメルクリン用のデコーダーを作っていたメーカーで、現在はDCCのデコーダーが主体。 私は基本的にデコーダーはESUに決めている。
ECOSは性能的にはメルクリンのCS2とほぼ同じで、DCCだけでなくメルクリンモトローラーにも対応している。
DCCユーザーではCS2にするか、ECOSにするか迷う人が多い。


ROCO社
Z21 (黒い箱がZ21、右に写っているのはメルクリンの入門用コントローラー)

ROCOもデコーダーを販売していたが、2012年よりこのコントローラZ21を販売し始めた。 液晶モニターが無いので価格もCS2等の半値ほどで、形も小さい。 有線のコントローラーも接続できるが、無線LANを使ってiPadなどの携帯端末で運転するのが基本。 ROCO社の無線LANの日本での使用もROCO社が申請中で、近日中に問題なく使えるようになるはずと聞いている。


電気機関車のタウルスの画面。このレバー類を指で操作することで運転できる。



3) カンタム方式
 アメリカの会社であるが、天賞堂の製品に積まれているので日本型の車両がある。 
 DCCでは基本的にDCC用のコントローラーが必要であるが、これはDCのコントローラーでも走らせられる。 と書いたが、実はDCCの車両もDCで運転できる。 ただし、サウンド等自由に出せないし、走りも不自然なことが多い。
 それに対し、カンタムではスムーズにDCで走らせ、かつサウンドも出せる。

ということであるが、内容はDCCであり、DCCのコントローラーで走らせられるし、その方が快適であろう。 という程度しか、これについては知らない。






C 将来はどうなる。

 もちろん、DC直流運転は残るであろう。
ここではDCCがどうなるかを予測する。

ディジカメを見て見ると、最近SDカードにWIFI付きというのが現れたそうだ。
そして、何かにつけWIFI機器が溢れている。
すでに現在、鉄道模型でもDCCでiPoneやiPadなどの機器を使いWIFIを使って運転している。

これらから考えるに、現在はDCCのコントローラーとWIFIを接続して、コントローラー経由で機関車を運転しているが、近い将来車載デコーダーにWIFIが搭載されるものと思われる。

と言う事は、iPoneやiPadなどから直接機関車を制御することになる。 
線路からは動力源たる、電力だけを供給する方式である。

この時に、供給電力が現在のDCCと同様な形態で有れば、多分DCCとの共存が可能かと思う。 このことは、WIFI搭載の機関車が出たらすぐに、その方式も併用して両方とも動かせる事になる。

まあ、ラジコン飛行機を考えれば、無線で機関車1台ずつに信号を送って制御するのは当たり前の方式になりそうだ。

以上は、私の予測ですが、デコーダーにWIFIが積まれると言うのはすでに耳にいれた話です。



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