ドイツからスイスに着きました。 スイスのチューリッヒからです。
26 バーデンへ
5日目ともなると一人どこかに出かけたくなる。 簡単なドイツ語も話せるようになった。 といっても「ビッテ」「ツァーレン」「ダンケ」の三つだけである。 「すみません」「お勘定」「ありがとう」に相当する。 たったこれだけで食事も買い物も出来る。
そこで、今朝は列車に乗りバーデンという小さな街を散策するつもりだ。 バーデンとはドイツ語で温泉という意味で、ドイツのバーデンバーデンは有名だが、スイスのそこは単にバーデンと言う。 そこに小さな城跡と温泉があるという旅行書の小さな記事だけが頼りである。
切符は近郊区間なので自動販売機で買う。 販売機にABC順に駅名がたくさん書いてある。 そして駅名の後ろに番号が振ってある。 バーデンは4800番だ、そこでキーボードから4800を入れると値段が表示されるので、コインを入れればよい。
自動販売機で買った切符。 自分一人での旅行なので、切符を買うのに苦労したと書いてある。
駅の表示はわかり易く難なく列車はわかった。 今度は2等車で地元の人も何人か乗っている。 編み物をしている人、新聞を読んでいる人、子供ずれの人もいる。 普通列車だが近郊列車(Sバーン)ではないので、小さな駅は止まらない。 20分ほどでバーデンに着く。
バーデン駅。 後ろに見える山の上に城跡が見える。
27. 城跡
駅から回りを見渡すと後ろの山上に小さな崩れた城跡が見える。 あそこに行くんだなと方向がわかり早速歩き出す。
街は古い石造りの建物が並び小さな店もいくつかある。 何を売っているのかと思ったらマッキントッシュ(アップル)のパソコンだっりマクドナルドだったりして、決して昔の品を売っているのではない。
その向こうにいかにも昔のスイスという大きな時計塔が見えてきた。
200年は経っていそうな時計塔の下をくぐり抜けると、八角形の噴水があり、その中は塔になっていて上に人の像がある。 噴水なのか水飲み場なのかよく分からないが、スイスではよく見られるものだ。
その近くに城跡に登る道があるはずだがそれらしい道は見あたらない。近くで道を掃除していた若者に尋ねると、すぐ横の建物と建物の間の隙間を指差した。
一人がやっと通れる路地と言うにも狭い隙間を上がって行くと、視界が開けてきた。
下に家々のオレンジ色の屋根を見て息を切らせながら山道を上がると城壁の下に出た。
城の入り口は石作りの建物で中で直角に曲がったり、きつい階段もある。 敵が来た時入れないようにするためだと想像できる。
薄暗い建物を抜けると広場で、その先に城跡を思わせる崩れた建物があり、てっぺんにスイス国旗が掲げられている。
さっそくセルフタイマーで記念写真をして、石垣に腰掛けて下を見ると、まるでレイアウトのようにバーデンの駅が見えた。
バーデン駅、これから行くリマト川は右のほう
山を下り、リトマ川のそばに出る。 建物は雰囲気があり、川につづく長い階段を女の人が上がって行く。 映画にでも出そうなシーンだ。
川は満々と雪解け水をたたえ、柳に似た大きな木がその枝を川面に落としている。 木々の隙間からは上流に、屋根のある橋が霞んで見える。
昔その橋を渡った所に代官屋敷があったとか。
28. 温泉
温泉を探しに川に沿って歩いていると、前から日本人が来た。 同行しているK村昭さんだ。 この人は京浜急行に勤めていたそうで、横浜に住んでいる。 ちょっと小難しい顔をした人だが、近くに有名な井戸があるとか、この先に温泉があるとか教えてくれた。
教えてもらった井戸の前で、昭さんに撮ってもらう。
温泉はいくつかあるそうだが、フェレナホフホテルと言うところが日帰りで温泉に入れると本に書いてある。 近くに行くと湯気が見える。
露天風呂、水着着用で混浴。
入り口を探しているとホテルとは別の建物で入浴後らしいおばさんが出てきた。 ここが入り口か聞いたが、まったく英語が通じないし返事も聞き取れない。 ままよと入れば温泉の入り口だった。
さあ、ここのシステムはどうなっているのか、切符はどうして買うのかであるが、案ずることはなかった。 向こうから声をかけてくれてチケットを買った。
水着着用なので、着替えるのであるが、さて更衣室はというと男も女も同じ部屋である。 えーと思うが、正確に言うとロッカー室が同じで、更衣はデパートの服売場の更衣室のように小さな更衣室がいくつか有り、そこで着替えるのだ。
だからロッカー室は同じでも良いのである。 しかしそれが分かるまで、いや分かっても女の人とお尻が当たりそうになるようで、しばし様子を見なければ入って行けなかった。
室内はプールになっている。 入って見ていると、老人が多く、やはり入浴と言うよりも温泉療法というような入り方をしている。
次ぎに外の温泉、露天風呂に行く。 これもプールのようだ。真ん中に泡が出ている部分があり、そこに行く。
すると周りの人が怪訝な顔をしている。 日本人だからかとあまり気にしない。 その内若い女性が入ってきた。 すると彼女はプールの端から一定時間ごとに序々に横に動いて行く。 良く聞くとたまに鐘の音が鳴っている。 ああそうか、フィットネスクラブでやっている方式かと、理解できた。
すなわち、プールの横から水と泡が出る場所があり、場所によって、その高さが違う。 鐘がなるまでその位置にいて、次の鐘で全員一斉に場所を代わって行く。 そして最後が私が立っている中心に来るのだ、ということで初めから順番を飛ばしたので皆怪訝そうに見ていたのだ。
これがわかりスタートの位置に行く。 真冬の露天だが寒い感じはなかった。室内に戻りバスロープを着て、連日の疲れ取りにチェアーでしばし横になる。
バーデンの駅に戻りあらためて駅舎を見る。
この駅はスイスで初めて出来た駅で、日本で言えば新橋にあたると、さきほどK村昭さんから聞いていた。 そういえば古めかしい形をしている。
チューリッヒへの列車には先ほど一緒だった、編み物をしていた人も乗っていた。
29. チューリッヒの街角
チューリッヒはチューリッヒ湖から出るリトマ川に沿った大きな街だ。
スイスではジュネーブが有名だが多分チューリッヒの方が大きな街だろう。 一人でみやげを買いに街を巡る。
地図で見ると川の両側に街があり、簡単に道が分かりそうだが、実は結構な丘でかなり高低差がある上に、曲がりくねった路地や階段があり複雑怪奇だ。 だからこのまま行けば川のはずだが、なかなか川に出会わずどこか分からなくなる。
しかしこの曲がりくねった道は雰囲気が良いし、道沿いには古い建物が並び、小さな店も小粋で思わすカメラのシャッターを切る。
そうだ、たしかここにシャガールのステンドグラスのある教会があるはずだが、教会は沢山ある。 それらしいものを見つけたがよく分からない。 土産も探さなければならないのであきらめたが、実はその教会のドアにまで手をかけていたのである。
30. ロンドンに向かう
今日は忙しい、今からロンドンまで行かなければならない。
チューリッヒ駅のコインロッカーに荷物を取りに戻る。 この駅のエスカレーターは下が透明で横から見ると機械部分が見えて面白い、建物は古くて貫禄があるが、新しい部分は遊び感覚も取り入れてある。
眺めている内に、皆三々五々戻ってきた。
ここでK社長と別れる。 それから一人で来ていたお婆さんとも別れる。 その時お婆さんが 「それじゃあ、私は今からベルリンに行きますので失礼します」
と言って、一人でベルリンに行ってしまった。 すごいお婆さんもいたものだ。
チューリッヒ空港まで列車で行き飛行機でフランクフルトに、そこで乗り換えてロンドンのヒーストー空港に着くと夜の10時だった。 迎えに来た観光バスでケンジントンのホテルに行ったが、そこは昔泊まったことのあるホテルの隣のホテルだった。
ドイツ、スイスとヨーロッパ大陸を回ってきて、やっと最後目的地ロンドンに着いたのだけれど、強行軍で疲れ果てている。
このつづきは
31. ビクトリア駅 からでオリエント急行に乗ります
1993年鉄道模型紀行1 その5 につづく。
その5が最終です。
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