放射線とは何だろう
15 言葉でだまされるな! 

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2013/6/

15 言葉でだまされるな!

 
放射線より怖いのは言葉だと思う。 言葉の使い方で恐ろしさの程度をどうにでも変えられる。

原発事故直後の新聞の見出しに「死の海流、南に流れ出す!」などの凄い言葉が出た。 では海には死んだ魚がどんどん浮き上がったか? まあ、言葉のあやには違いないが、あの時にはこれを見て恐怖を感じた人がたくさんいたと思う。

テレビの討論会も多かったが、やはり放射線は危険だとばかり言う人間。 危険には決まっているのだが、その程度とかは無視して、些細な程度でも危険だと言いふらし、人々を恐怖に落としこみ、自分は如何にも正義の人間だと見せびらかしている。特にひどいのは、いや、書くのは止めよう。

そして、ネット上に流れた言葉は「御用学者は国から金をもらっているので、国の利益しか言わない」とか「企業から金をもらっているので、、、」などである。 挙句のはてに、放射線の専門家の医師や学者や技術者を名指しで、辞めさせろとまで言っている。 私は「御用学者」というような言葉を使う人間の言う事は信用しない。たとえそれが大学教授であろうともである。

この人達は何を考えているのか。 この事故が起きて放射線に詳しい医師や専門家がいなければどうやって事態を解決するのか!!  しかし事実、本当にクビにされるか人々の中傷を浴びそうなのでほとんどの専門家は口を閉じてしまった。 

それに、研究というものは金がなければできない。 iPS細胞の山中伸弥教授の話を聞いても分かるだろう、科研費をもっと出して欲しい、である。科学研究費は国から出ている。これが無ければ研究など出来ないし、研究者の勤め先は国立や公立の大学、研究所が多く、それらでも研究のため企業と産学協同で費用を出してもらって研究をしている。

放射線だって当然同じで、国や企業からの費用が無ければ放射線の安全も研究できない。  すなわち放射線の専門家はほとんどが彼らの言う「御用学者」なのであり、その人たちを取り除いたら、事故の収拾も出来ない。

本当に目先しか見ない人が多い。 そして、すぐに感情に話を持って行って「被災者の気持ちを考えろ」である。 もちろんそれは大切なことであるけれども、事故の物理、科学的な内容とは異なる。 冷静に事故の原因や対策を考える時には人の感情を入れてはならない。

私は福島の事故で、これは人海戦術でたくさんの人を動員しないと事故の処理が出来ないと思った。 それは被曝するからで、ある程度被曝すれば、次の人が行って次々に人を交代させて作業をする必要があるからである。 

そして、福島原発の責任者や専門家たちはできるだけ、被曝しないようにしてもらわなければならないと思った。 何故かと言うと、この原発に詳しい人がいないと指揮や対策が出来ない。この人たちが被曝限度を超えて、原発から離れさせられる事になったら、誰も現場を知らない人間ばかりになるからである。

このような時に、責任者は現場で被曝しながらでも先頭に立って処理しろ、と言うのはおろかである。 問題は人に被害を与えないように如何に早く事態を収めるかである。 

某週刊誌では、「原発処理の労働者集めにホームレスや浮浪者を集めて危険な仕事をさせている」と、書いていたが、それが何故悪い。 一流会社の人間や金持ちがそんな仕事をしに行くか? 第一その週刊誌の社員も行くか? その人たちが金目当てであろうとも行ってくれるお陰で、原発の後処理が進んでいるのである。 

もっとも、これが事実かどうかは知らないが、なにせ、こういう作業をしてくれている人々がいるお陰で、処理が進んでいるのであり感謝すべきである。

目先の事ばかりを考えて全体を見ないような人間にはならないように気を付けなければならない。言葉の綾で、恐ろしさを増強させてはならない。 

 偉そうに言っている私も、他の人から見れば馬鹿な事を言ってと思われているかもしれないけれど。



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