放射線とはなんだろう
 1 はじめに

ホームに戻る

放射線とは何だろう タイトルに戻る

upload 2013/4/4
update 2015/11/15


1 はじめに

病院で放射線技師をやっていてレントゲン写真を撮影する仕事をしていました。

そこで良く経験したのが、レントゲンは放射線なので撮影が怖い、癌になる、子供ができなくなる、はたまた部屋に放射能が漂っているとか、怖がったり嫌がったりする人が時々おられる事です。


ずいぶん昔からこのような方々がおられますが、最近では原発の影響で一層怖がる方が増えています。 

放射線が怖い! これは、当たり前のことです。

過剰な放射線は体に悪影響を与えます。しかし、その量によって影響は異なります。 

この量について考えない人が多いのです。

ここでは、私が現役時代に、このような患者さんに被曝について説明した経験や、放射線も役立つことがあることを理解していただきたいこともあり、このホームページでは鉄道模型に関係のあるものに限って書いていましたが、放射線を扱っていたものの責任として、少し書いてみたいと以前から思っていました。 

そこで、放射線、放射能について書いて行きたいと思います。

ここで、少し私の放射線に関する経歴を書き、内容の信ぴょう性について判断していただいたらよいかと思います。。

高校卒業後、国立の診療X線技師学校で2年間X線技師としての教科を学びました。X線の発生や物理的な性質、防護の仕方、X線写真の撮影法、そして医学も撮影に必要な基礎的な事だけでしたが学びました。さらに関係法規も学びました。

ここを卒業することで診療X線技師試験の受験資格がもらえます。
卒業後に診療X線技師免許とX線作業主任者(非破壊検査などに対応)を取得しています。

卒業の寸前に、さらに1年の専攻科が出来ました。 これはX線以外のガンマ線や高エネルギーの放射線を学ぶ所で、まだ出来ていないけれど診療放射線技師に対応するためで、病院内で核医学や高エネルギーの放射線治療が必要なために作られた全国で2番目の学校でした。 ちなみに学生数は4名、たったの4名です。

ここで、大学の理学部の研究施設での実験でストロンチウム90などの非密封の核種もさわり、はだかで存在する放射能物質への対応を経験しました。 その時にミスで手にストロンチウム90がついて、その除染に半泣きになって手を洗ったこともあります。 ガイガーカウンターの音が小さくなるまで洗う、洗い過ぎると皮膚に傷が付き体内に入るので擦り過ぎないようにする、と言うような経験です。 僅かな量ですがガイガーカウンターの音は怖いです。 もっとも自然放射線でいつでも軽くはポツンポツンと音がしていますが。

この時に、第1種放射線取扱主任を受験し合格しました。 とても難しい試験で、核物理などを教えてもらっていた理学部の先生(多分助手、若い)はとても難しい計算式などあっという間に解いてしまう人ですが、一緒に受験したのですが不合格でした。 その時言われたのが「僕たちは放射線についても物理的な性質についてはよく知っているが、医学や法令など、包括的な事は知らない。 放射線技師学校が羨ましい」ということで、管理者の試験なので関係法規の占める割合が多く、そちらで落ちたのでしょう。

なお、放射線や放射性物質は病院や研究所、原発だけでなく、色々な会社でもそれらを使って製品の開発や研究等に使っています。 その時に放射線取扱主任の免許を持った管理者が必要なために会社から業務命令で受験しに来ている人もたくさんいました。 でもそのほとんどの人は不合格でした。

学校卒業後、大学病院の放射線部で診療X線技師として勤務。 それより遅れて診療放射線技師の国家試験ができて、第一回診療放射線技師試験を受けて日本最初の診療放射線技師の一人になりました。 

以後、核医学や放射線治療を行うのが当然だったのでしょうが、撮影が好きなために普通のX線を使った撮影が主な仕事です。 写真が好きだったために放射線画像の画質を上げるべく、その方法や評価を主に研究も続け、53歳で工学博士を取得しました。博士論文は「医用X線像特性に関する計測の研究とその応用」です。

放射線写真は如何に被曝を少なくして良い写真を撮るかというのが基本的なテーマであり、つねに撮影における被曝は検討してきました。
同時に、患者さんへの被曝の説明、院内で医師や看護師に対しての被曝の説明なども行ってきました。

定年まで大学病院で勤務後、放射線技師関係の大学や専門学校で非常勤講師を務めて現在に至っています。 教えている科目は、放射線機器、放射線画像工学、放射線写真学などです。

免許等をまとめます

診療X線技師免許
X線作業者免許
第一種放射線取扱主任免許
診療放射線技師免許
工学博士

以上

このように、放射線技師とは言え、私の専門は放射線写真の技術的な事に興味があり、放射線そのものには特別詳しいわけではありませんが、一般的な放射線技師のレベル程度と考えてもらって良いでしょう。


分かりやすく書く、ということは、必要以上に正確に書かない事です。

正確を意識すると細かい部分にまで立ち入ることになり、全体的な理解がしにくくなるどころか、むしろ間違った解釈をする場合があります。

用語もそうですが、正しく言えば言うほど理解できないし、それこそ放射線用語辞典を横に置いて、さらに理化学事典なども見ながらでないと理解できなくなります。

ですから、多少正確で無くても大筋で理解していただくように書くつもりです。

実はこれが難しいのです、人によって、聞きたい内容も違うし、その方の持っている知識も違うので、話をする時にはその事をそれとなく観察しながら、その方に合った話をするのですが、文章ではそれができません、と、まあ、前置きが長くなりましたが、私なりの書き方で進めます。

その2 がんと放射線に行く