放射線とはなんだろう
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2.がんと放射線。 その1検査

 放射線に当たるとがんになる、だから「放射線とがん」だろう、と思うかもしれませんが、反対の話。

「がん」は怖い病気です。 たくさんの方ががんで亡くなっています。

では特殊な病気か? というと、自分の身近な人や芸能人等でがんになった方は沢山います。
実は、がんの発生率は約50%です。すなわち半分の人ががんにかかっているのです。

そして、がんによる死亡者は人口の30%、脳卒中などで30%、心筋梗塞などで30%、合わせて90%の人はこの3つのどれかで亡くなっています。 そして、残りの10%を他の病気や、交通事故その他で亡くなり、老衰で亡くなる方はほんの少しです。

ということで、人間いつかは必ず死ぬ。その中で大きな原因がはじめの3つで、3大成人病と言われています。

ということで、がんは約半分の人が掛るので特殊な病気ではありません。

事実、私もがん患者です。

54才ごろだったか、カラオケで大声を上げすぎて、喉に炎症が出来ました。 
耳鼻科に通ってもなかなか治りません。 数年たっても治りません。 

その内に、声帯の組織を取ってがん細胞があるかどうかを調べる事になりました。 
口を開けて、喉から棒を突っ込んで声帯の細胞をほんのちょっと採取するのですが、のどにちょっとでも棒が当たると、ゲッとなって、苦しいのですが、我慢をしないと余計長くかかるので我慢、という検査を年2回続けていました。

数年後に、がんは無いけれど、怪しい細胞があると言われました。 病院に勤めているので細胞を検査する検査技師は顔なじみで、彼は私の細胞検査の結果を知っているはずですが、いくら親しくても守秘義務があるので教えてくれません、ただ、あまり良い顔をしていませんでした。

そして、58歳の時、ついに医師から「お気の毒ですが、がんです」と言われました。

かなりショックですが、その頃には声も出にくくなっていたので、原因が分かって良かった、という気持ちもありました。 

とりあえずCT検査で喉全体の状態を検査しました。 
もちろんCTは放射線を使った画像を作る機械ですから、放射線が喉付近に当たります、放射線が当たる事を被曝すると言います。
放射線を使って、体を切らずに体の中を検査するのが放射線検査です。

 そして、転移を調べるために、当時最新鋭のPET検査をしました。
これは核医学検査と言って、がんに集まりやすい薬品に放射性物質(ラジオアイソトープ、RI)をくっつけて体に注射します。
すると、がんにその薬剤が集まると共にRIもそこに集まるので、そこから出てくる放射線を測ると体の外から何処にがんがあるか調べることが出来るのです。

 このRIは体に注射するので、検査が終わり次第、どんどん減って行く、すなわち半減期が短い物を使うと共に、尿などで体外に出てゆきます。

しかし、検査して病気が解るような量は注射しなければなりません。

その量は、ベクレルで表わしますが、どれぐらいだと思いますか?


約200メガベクレルです。 メガは100万ですから、言葉を変えると、2億ベクレルです。
私の体の中に2億ベクレルの放射性物質が注射されました。そして、それが体中に行きわたって、がんの部分に集まる時間経過してからPETで撮影が始まります。 

一方、医師はその2億ベクレルの注射器を手で持って注射します。放射線技師、看護師は2億ベクレルを注射された患者の横で作業するのです。もちろん必要以外は出来るだけ離れています。 

というのも、患者の放射能はどんどん減って行きますが、医師や技師は、その患者が終わればまた、新たに次の患者の2億ベクレルの横で作業と言う事になり、これが毎日続くのです。

このRIは、原発のセシウムと違い、前述のようにどんどん減って行くタイプですが、初めはちゃんと2億ベクレルがあるのです。 

ですから、病院の核医学検査室では、放射性物質はメガ(百万)単位が当たり前で、1ベクレルや1万ベクレル等は数のうちに入りません。
もちろん、出てくる放射線の性質や半減期が原発とは違いますが、ベクレルとは物凄く少ない単位だと思って下さい。

なお、PET検査は治療後も何回か行うので、たしか計4回受けたと思います。
ですから、私の体に、8億ベクレルはRIが注射されています。 

これによる被曝は、体に影響のないような少ない量です。 そして、この検査のお陰で今は元気になっていると言う事です。


それらの検査をして、次の診察日に「何日に入院して下さい、何日に手術をします、その後放射線治療をします」と言われました。

医師は検査結果を見て、がんの進行度や転移を調べ、最良の治療方法をカンファレンスと言って、耳鼻科の医師、放射線科の医師と相談しながら決めて、手術室の予約、病室の予約など、麻酔科との調整、さらに他の科や薬剤部、栄養部などにも連絡をして、私の治療計画を立てているのです。

私の場合は早期発見でしたので転移はありませんでしたが、私が知らない間に医師たちはこういう治療計画を立てて、私のがんを治す方策を決めていたのです。 感謝!

なのですが、実は診察で「がん」と言われてから検査したり入院を待つ間に、どんどんがんが進展して行くのではないかと気になっていました。
一日も早く治療しないと転移する! と思うのです。

でも、その時には知りませんでしたが、がんは発生してから見つけられる大きさになるまでに20年ぐらいかかるそうです。 もちろんがんの種類や年齢によって異なりますが、急性の他の病気と違って、救急で輸送して治療すると言うものとは違います。

ちなみに年を取ると、体が成長しないので、がんもなかなか成長しない。若い人はその逆です。


そして、予定通り手術室で、全身麻酔の上でレーザーで喉頭がんを焼き殺す手術を受けたのです。 気が付くと病室に戻っていました。


その後、焼いた部分が落ち着いてから放射線治療が始まります。 

もちろん声帯を焼いたのですからこの時点では声は出ません。

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