放射線とは何だろう
10 医療被曝での説明 

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2013/5/

10 医療被曝での説明

 
レントゲンの撮影に来られた患者さんの中にはとてもX線を怖がる人がおられます。
その時にどうやって説明しようかと迷います。

医療における被曝と原発事故のような被曝とは異なります。
医療ではその被曝により病気が解ったり、治療の方針が決められたり、さらには放射線を利用して病気を治す等、被曝はするけれど自分の体にとって利益があります。

一方原発事故の被曝にはなんら利益はありません。そちらで言える事は被曝しないに越した事は無いが、この程度の被曝なら問題が無いでしょうとか、それは危険だから出来るだけ離れなさいというような内容になります。

被曝線量で言うと、原発などでは規定された線量以上被曝しないように、国で決めてありますが、医療被曝に関しては全然規定がありません。 すなわち、その被曝に対して十分なメリット(病気が発見される等)があれば、それで良しとされています。
したがって、医療による被曝は場合によってはかなり多く、原発事故で避難されているような地区の方々よりよっぽど多い被曝があります。

ここでは、医療被曝、すなわち患者さんへの説明です。

まともな説明は、線量とその人体に対する効果を説明しますが、ほとんど分かってもらえません。

 それよりも「そんなに放射線が危険なものなら検査しません」というと殆どの人が納得されます。
 さらに、「この病院では毎日何百人、全国では数えきれないほどの人が放射線検査を受けて被曝しています。 中には一日で100枚ぐらい撮影する患者さんもいます。」と言うと殆どの人は、あー私だけでは無いんだ、そんなにたくさんの人が被曝しているんだと安心されます。

それでも納得されない方には、放射線以外のリスクと比較します。
自然放射線の量や飛行機に乗った時の被曝についてもありますが、すでに述べたので他の例として。

たばこの影響です。
胸部撮影1枚とたばこ1.5本の喫煙によるがんになる確率が同じだと言われています(数値は研究者によって多少異なる)。 したがって、毎日たばこを15本吸えば、毎日胸部を10枚撮影しているのと同じ事になります。 これで胸部撮影についてはほとんど安心してもらえます。 だって、毎日10枚も撮影するわけが無いし、たばこを吸う人は365日毎日どころか、何年も吸っているのですから、それに比べて胸部撮影のリスクなど数のうちに入りません。
 しかし、毎日胸部を10枚撮影するのを何年も続けるのは恐ろしいでしょう? たばこは止めましょう。

交通事故や他の事故とも比較します。
交通事故だけで毎年1万人もの方が亡くなっています。それに対して明らかに放射線の影響で亡くなっている方はいません。ですから放射線検査を受ける事のリスクより、病院に来る事自体のリスクの方が大きい(かもしれない)という説明です。

このように、他のリスクと比較して放射線のリスクは決して大きなものではありませんが、ただでさえ色々なリスクがあるのに、これ以上放射線のリスクを背負いたくないと言う人も結構います。

医療の場合はそんな事よりも取りあえず自分の病気を治す事の方が大事だろう!と怒鳴りたくなる事もありますが、原発事故の様にメリットが無くリスクだけ負うような場合は切実かもしれません。

しかし、人間生きてゆくうちで色々なリスクがあるので、その上にと言っても、ほんの僅かなリスクを避けるためにかえって大きなリスクを背負う事になるかもしれない事も考えなければなりません。



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